アーケードコントローラーの評価で、よく語られる言葉があります。
それが、「軽いほうが良い」というものです。
- 持ち運びがしやすい
- 取り回しが楽
- 大会や対戦会に持っていくにも負担が少ない
確かに、薄型で軽量なレバーレスコントローラーは、近年の市場でも高く評価されてきました。「バッグに入れて持ち運びやすく、収納場所にも困らない」日常的に使うデバイスとして、軽さは明確なメリットを持っています。
しかし、実際にプレイしてみると、一つの問題が見えてきます。
それは、軽いだけでは、必ずしも「プレイにとって最適」とはいえないのです。
たとえば、膝の上に置いてプレイする場合。
コントローラーが軽すぎると、操作中のわずかな力で位置がずれてしまうことがあります。机に置いて使う場合でも、入力のたびに本体がわずかに動けば、その都度プレイヤーは姿勢や手の位置を調整することになります。
このようなズレは、ほんのわずかなものです。しかし、前回お話しした「入力ノイズ」という観点で見ると、それは確実にプレイの集中を削る要因になります。
では、逆に重ければ良いのでしょうか?必ずしもそうではありません。
重量のある筐体は安定しやすい一方で、膝置きでの長時間プレイでは負担になりやすく、持ち運びのハードルも高くなります。特にオフライン大会や対戦会では、移動や待機時間も含めてコントローラーを持ち歩く場面が少なくありません。
つまり、レバーレスコントローラーの設計には、常にトレードオフが存在します。
- 軽さを追求すれば安定性が損なわれる
- 安定性を重視すれば重量が増える
- サイズを小さくすれば携帯性は上がるが、手のひらのスペースが不足する
ユーザーの要望をすべて満たそうとすると、どこかに必ず矛盾が生まれます。そこで重要になるのが、「安定している」という状態をどう定義するか?です。
そこで最終プロダクトに至るまで、多くの試作品開発を行いました。

筐体の試作検証品

底面の滑り止め素材の比較検証
多くの場合、重いほうが安定すると考えられがちですが、実際には重量だけが安定性を決めるわけではありません。机や膝の上でコントローラーが動かないためには、底面のグリップ力や設置面積、重心バランスといった複数の要素が関係しています。
つまり、安定性とは「重さ」ではなく、構造のバランスによって生まれるものなのです。ZENAIMのアーケードコントローラーでは、このバランスをどこに置くべきかを徹底的に検討しました。

軽さ、サイズ、操作性、携帯性。それぞれの要素を個別に最適化するのではなく、プレイ中の体験として最も自然なバランス状態を探ること。
そのためにはまず、レバーレスコントローラーというデバイスが持つ課題を細かく分解し、何を優先すべきなのかを明確にする必要がありました。
次回は、こうして見えてきた設計要件をもとに、ZENAIMがどのように筐体構造を作り込んでいったのかを紹介します。
ボタン性能だけでは語れない、レバーレスコントローラーの設計思想について、具体的に掘り下げていきます。